26th Japan Society of Applied Physics JJAP The Best Original Paper Award 第26回応用物理学会論文賞(2004年度)受賞 |
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■受賞者: |
竹内淳(早稲田大学)・黒田剛正(早稲田大学)・中田義昭(富士通研究所)・村山雅洋(早稲田大学)・北村崇光(早稲田大学)・横山直樹(富士通研究所) |
■論文 Title: |
Electron Spin Flip by Antiferromagnetic Coupling between Semiconductor Quantum Dots |
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■著者 Authors: |
Atsushi Tackeuchi, Takamasa Kuroda, Yoshiaki Nakata, Masahiro Murayama, Takamitsu Kitamura and Naoki Yokoyama |
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■掲載号: |
受賞論文概要 (応用物理 第73巻 第8号 2004 p.1036)
半導体中の電子スピンを操ることにより、新しい自由度が一つ手に入り新しい応用の可能性が開ける。特に、3次元的に電子を閉じ込めるナノ構造である量子ドットに電子を注入してコヒーレンス時間を長くし、スピン間の相互作用を制御することができれば、量子情報処理の可能性が生まれる。スイスのD. Lossらは、隣接するドットのスピンどうしで交換相互作用を制御することにより量子コンピューティングを実現できると提案し、大きな注目を浴びてきた。この手法のみならず量子ドットの電子スピンを用いた量子コンピューティングにおいてスピン間の交換相互作用は重要な要素である。しかし、これまでドット間のスピンの相互作用は実験的にはほとんど調べられていなかった。
本論文は、トンネル過程が可能な量子ドット間のスピンに反強磁性的秩序が生じ、スピンが反転する過程を直接的に観測した画期的な実験報告である。高い結晶成長技術により縦方向に量子力学的に結合したInAlAs/InAs半導体量子ドットの作製に成功し、加えて高度な時間分解測定技術により、円偏光により生成されたスピンがInAs量子ドットでは80ps前後で反転する過程を10 Kで実測した。さらにInAlAs量子ドットのスピンとの間の反強磁性秩序が50-80 K以下の温度で存在することを明らかにした。またドットの電子密度とスピン反転との関係、および交換相互作用の理論計算と反転が観測される温度との比較を行っている。
ドットの電子密度との関係、および理論計算との比較から、この現象が反強磁性的交換相互作用によるとした解釈も正当なものと考えられる。なぜInAsドットで反転するのかなど理論的に新しい問題も提起しており、今後の量子情報処理への応用と、半導体の基礎物理学の研究との両面において極めて重要な研究報告であり、JJAP論文賞にふさわしい。
2004年9月1日 応用物理学会開催中の東北学院大学にて。
授賞式は理事会の会場で行われました。
The award ceremony was held in Sendai. Left: President of JSAP, Prof. H. Sakaki. Right: Prof. A. Tackeuchi
賞状と記念のメダルは、榊裕之応用物理学会会長から手渡されました。
Medal and a letter of commendation
黒田剛正氏 Dr. T. Kuroda
中田義昭氏 Mr. Y. Nakata
村山雅洋氏 Mr. M. Murayama
北村崇光氏 Mr. T. Kitamura
横山直樹氏は所用により欠席。上の各画像をクリックするとその数秒後の写真が見られます。
JJAP論文賞(1999年までは学会賞A(論文賞)と呼ばれた)の受賞は、
早大では1993年以来、富士通研では1982年以来、いずれも2件目です。(参考:応用物理学会論文賞受賞者一覧)
*授賞式動画 Movie of the ceremony (10M, wmv)
Department of Applied physics, Waseda University
Okubo 3-4-1, Shinjuku, Tokyo 169-8555, Japan