** 研究室での生活を始めるにあたって **  

                                          竹内 淳 1998.4.1

研究室での生活を始めるにあたって、気をつけてほしいことを以下に記します。

  研究を行うために重要なことの一つは、研究環境の維持という点です。人間は環境によって大きく影響されます。よい研究を行うためには、よい環境の維持が不可欠です。あなたが雑談をしている隣で、先輩や友人が精神を集中して物理の最難問に挑戦しているということも、充分ありえます。当研究室では、世界の第一線の研究機関と同一レベルの研究環境の維持を目指しています。生活態度については、基本的には、早稲田大学の学生として、また、二十歳をこえた成人としての個々の判断に期待しています。すくなくとも他の人に迷惑をかけるような行為はやめましょう。

研究室内での禁止事項

・音楽を聴くこと(自分にはよくても、他人の集中力を阻害する恐れがある)

・まんがを読むこと(かばんの中に所持するのは可. 机の上に出してはいけない)

・たばこを吸うこと(自分だけでなく、周りの人にも健康被害を及ぼします)

・実験室で飲食すること(毒物を体内に入れる恐れもある)

など. また、落ちているチリを拾う、整理整頓を心がけるなどは社会常識として当然要求されます。

 
学校教育は、小学校から大学3年にいたるまで、個人にとってはほとんど「インプット」のみでした。ところが、実社会で要求されるのは、「あなたが何をアウトプットできるのか(どんな貢献ができるのか)」ということです。アウトプットできなければ、どれほど情報がインプットされていても無意味だということになります。すなわち、どんな貢献ができるのかで、あなたの社会的な価値もきまります。これまでの約15年間にわたる教育(これからの実社会や大学での教育も)は、これから何かを「アウトプット」するためのものだと言えます(しかも既存のものではない何かをアウトプットできればさらに価値が高い)。

実社会にでる予定の人も、大学院に進む予定の人も、その点を意識して、自分自身にとって社会的な最初の自己表現の場である「研究」に取り組んでみて下さい。とくに、過去3年間の学生生活で「学校に出てくる習慣」を喪失した人は、毎日できるだけ研究室に顔を出すようにして、自分自身の新しい生活に慣れるようにして下さい(少しずつでもかまいません)。

 それから、研究のおもしろさを理解するためには、研究(物理)の内容に対する深い理解を必要とする場合が往々にしてあります。「わかっていて、おもしろくない」のならしかたがないのですが、「わからないので、おもしろくない」のであれば、先輩や友人、そして教員に質問するという姿勢を養って下さい。

最新の研究テーマ、最先端の研究課題などは、本を読んで学べるものではありません(すなわち、有形ではない)。たとえば、大学で教科書として使われている本はもっとも新しいものでも、約10年前までの研究結果が記載されているにすぎません。授業においても、講義の一般性を保つためと、授業時間の不足から、講師が最新の研究課題に触れることはほとんどありません。テレビや種々の雑誌などのマスメディアが伝える科学も大きく偏っており、また、ときには陳腐なものです。最新の科学が披瀝される場は、英文で書かれた国際的な論文誌、国際会議、日本国内においては、学会や研究会になります。研究室では、できるだけそれらの情報を反映させたいと思っています。


それから、研究活動においては、研究をすすめる基礎として、

 

・安全衛生教育

 

・実験器具・備品・消耗品の選定・交渉・発注

 

・論文の検索と複写

 

などを順次、学んでもらう予定です。

 

 

****** 追加事項 (2011.5.10******

 

指導教員の捺印やサインが必要な書類がある場合は、締め切りより十分早く指導教員に報告しましょう(締め切り1週間前から指導教員が出張で不在ということもありえます)。

 

 


** 実験の心得 **

                                                                              1997.10.28
・実験前

 研究計画全体の中で、今日何をなすべきかを考えます。

 そして、今日の目標を明確にします。

 タイムスケジュールを含めてイメージトレーニングをします。

 実験に必要な器具、部品などの準備を万全に行います。もちろんベストの体調でのぞみます。

・実験中

 実験の進行に関して常に頭を働かせます。また、目標を見失わないようにします。
(判断を誤ると、1時間でできる作業が1週間になることもあります)

 実験の進行状況は想定通りか、また、もし違うとしたら何が違うのか、を常に考えます。
 (想定と違う場合に新しい発見があることもありえます)

 世界の第一線のプロの研究者がコンペティターであることを忘れないようにしましょう。
 (実験に集中すべく最善の状態を維持します。集中力を妨げる私語は厳禁です)

 物理的な本質は何かを考えます。

 実験系や器具などの実験上の不満については改良策を考えます。

・実験後

 問題点を明確にして次の実験までに解決するようにします。

 あるいは、少なくとも次の実験で何をなすべきかを明らかにする必要があります。

・実験系について

 実験系は、数百から数千点の部品の集合体からなるシステムです。
 そのうちの一つの部品にでも不具合があるとシステムは機能しません。

 したがって、光学部品一個のネジ止めもおろそかにしないようにしましょう。


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Tackeuchi Laboratory

 

Department of Applied physics, Waseda University

3-4-1 Ohkubo,Shinjuku-ku, Tokyo 169-8555, Japan